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12月3日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ

12月3日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ(12/7)

2016年12月3日(土)、青山学院大学にてAJEQの定例研究会が開催されました。
第1発表では、10月に刊行されたばかりのジュール・ヴェルヌ『名を捨てた家族―1837-38年ケベックの叛乱』(彩流社)の訳者である大矢タカヤス会員が、作品の歴史的背景について詳説してくださいました。日本ジュール・ヴェルヌ研究会からも応援をいただき、感謝いたします。
第2発表では、松川雄哉会員がケベックの伝統的なダンスについて、学術的資料を駆使しながら紹介してくださいました。ダンスの実演もあり、長い冬を楽しく過ごすための北国の人々の知恵が実感される発表でした。
詳細は、以下、ご本人からの報告をごらんください。(小倉和子・立教大学)

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日時:2016年12月3日(土)16:00~18:00
場所:青山学院大学 17号館7階17713教室
<プログラム>
第1発表:大矢タカヤス会員(東京学芸大学名誉教授)
「ヴェルヌの小説の主題となった1837-38年ケベック叛乱前後の状況」
第2発表:松川雄哉会員(白百合女子大学)
「ケベックの伝統的なダンスについて―概観と実践」
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大矢タカヤス会員の発表についての報告
「ヴェルヌの小説の主題となった1837-38年ケベック叛乱前後の状況」
 ジュール・ヴェルヌは1837-38年にケベックで起きた叛乱を題材に『名を捨てた家族』(Famille sans nom)という小説を書いた。架空の人物を巧みに史実に織り込んでいるので、物語を味わいながらケベックの歴史の重要な転換点となったこの事件を追体験できる作品である。ストーリーの主題であった叛乱は軍事的に完全な失敗だったが、物語の終わったあと、現実にはフランス系カナダ人がその敗北を乗り越え、武装蜂起の際に主張した独立とは程遠いものの、イギリス系に同化されず、曲がりなりにも今日まで独自のアイデンティテイを保持するに至った道筋を理解するために、叛乱前後の状況を再確認することは有益であろう。
 1763年にパリ条約でフランスの北米植民地がすべてイギリスに譲渡されて以来、かつてのヌーヴェル・フランスはイギリス植民地となった。イギリスはフランス系住民が圧倒的に多いこの植民地を遠隔支配するために、1791年にカナダ法を施行した。この不公平な法制度に苦しんだフランス系住民は、溜まりたまった不満と怒りを1834年に92ヶ条の決議にまとめ、本国に突きつけた。しかし、これをイギリスがほぼ全面的に拒否したので、パピノーを中心とする愛国者党は武装蜂起もやむなしとする方向へ突き進む。ただ武力闘争には慎重な少数派もいて、たとえば、パピノーの腹心であったラ・フォンテーヌは1837年の叛乱には加わらない。叛乱のあとに出されたダラム報告書は、責任政府を慫慂する点ではフランス系住民の主張と完全に一致していたが、彼らを英系に同化させ、アイデンティテイを失わせるために東西のカナダ植民地を融合すべきという提案も含む、全体として矛盾に満ちた報告書であった。ところが、イギリス本国は1841年に後者のみを取り入れたカナダ連合法を敷き、それまで容認されていた議会での仏語使用を廃止し、議員定数は人口比をまったく無視して東カナダと西カナダに同数を割り当てた。叛乱が厳しく弾圧された挙げ句に、これまで以上に不利な連合法が施行されるなど、フランス系住民にとっては暗黒の時代が続くかに見えたが、フランス系議員のリーダーであったラ・フォンテーヌは発想を逆転し、西カナダの改革派ボールドウィンと組んで連合カナダ議会の多数派となり、フランス系住民として初めて首相に就任する。以後、時々の総督に圧力をかけながら、少しずつ譲歩を得て行くのである。(大矢タカヤス)
2016,12,3研究会大矢

松川雄哉会員の発表についての報告
「ケベックの伝統的なダンスについて―概観と実践」
 本発表では、ケベックにおけるダンスの歴史を概観しながら、今日ケベック人に親しまれている伝統的なダンスを紹介した。
 Tremblay et Voyer (2001)が紹介している « Journal des jésuites »によると、ケベックで初めてダンスが行われたとされるのは、1645年のことである。この年、ある婚礼の際にバイオリンの演奏でダンスが行われた。そして1667年には、初めてbal(舞踏会)が開かれた。17世紀末には、人口的に男女の比率が整い、18世紀に入ると、balが大流行した。当時を生きた人々の手紙や日記によると、当時のカナダ人は、夕食後、寒い冬を乗り切るために、我を忘れて朝まで踊っていたらしい。また、当時カナダに滞在していたPierre de Sales Laterrièreという医者は、1770年に、「カナダ人以上にダンスが好きな国民を私は知らない。彼らはフランスのコントルダンスやメヌエットを踊り、そこにイギリスのダンスを織り交ぜている。」と書き記している。この彼の証言は、イギリスによるケベックの支配が始まって(1760年)以降、ケベックで踊られていたダンスがイギリスなどの文化の影響を受けていたことを示している。特に19世紀には、多くのアイルランド系移民がケベックに定住した。この頃、ケベックではカドリーユやコティヨンを踊っていたが、そこにアイルランド起源のジーグが組み込まれていった。ジーグはケベックでも人気となり、アイルランドとは異なる独自のジーグ(gigue québécoise)を発展させていった。
 一方、現在ケベックで踊られている伝統的なダンスの基礎となったのは、set carréというアメリカで生まれたダンスである。これはコティヨンが単純化されたものであり、さらにそこに、踊り手や演奏者に指示を与えるcallが組み込まれた。これにより、踊り手は振りを覚えるという負担がなくなった。このダンスが、夏の間アメリカの農場で働いていたフランス系カナダ人労働者によってケベックに持ち込まれた。当初、callは英語で行われていたが、1950年にOvila Légaréによってcallが初めてフランス語化され、calleurという職業が確立された。この仕事は、伝統的なダンスのイベントを盛り上げるだけでなく、ケベック各地で口頭伝承されてきたダンスが失われないように、それを収集して資料化するという重要な役割を担っている。
 この伝統的なダンスのおかげで、ケベックの厳しい冬の夜は楽しく暖かい。踊りに来る人達は様々である。すでに上手く踊れる人はそうでない人を受け入れ、初対面同士でも助け合いながら踊り続けることによって、そこに調和が生まれる。このような姿勢が、多様性を受け入れるケベックの社会を反映しているように思われる。(松川雄哉)
★AJEQ研究会2016,12,3 ★IMG_0517
(撮影:立花英裕・小倉和子)
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第18回 韓国ケベック学会(ACEQ)参加報告

第18回 韓国ケベック学会(ACEQ)参加報告 (11/28)
杉原 賢彦

18回目を迎える、韓国ケベック学会(ACEQ)の大会は、去る11月12日(土)に開催された。
今回は、世界の映画人を震撼させ、同世代の若者たちから絶対的かつカリスマ的な人気と影響力を誇るケベック映画界の新星グザヴィエ・ドラン(Xavier DOLAN)に焦点を当て、その魅力をケベックというトポスと彼の映画そのものから探るという、「大胆にして果敢な試み」(企画者のパク・ヒテ(PARK Heui-Tae)先生自身の言葉による)のもとに発表が組まれた。また、これに加えて大会前日となる11日(金)より、ソウル市内の文化的中心地チョンノ区にある「シネマテーク」(公的なものではなく、アート系映画を中心に上映するマルチコンプレックス館)でドラン作品のレトロスペクティヴが編まれ、最新作『たかが世界の終わり』(Juste la fin du monde)のプレミア上映も行われ、複層的な構成が取られた。

大会の会場となったのは、チョンノ区の文教地区に位置し、アジア最古の大学として知られるソンギュングァン(成均館/Sungkyunkwan)大学。1398年の創立とされ、600余年を誇る同大学は、ソウル大学にもほど近く、大学街ならではの活気と閑静な雰囲気を併せもつ。
折からのパク・クネ大統領に対するデモ(まさにその規模が増大し始めた折でもあり、11日は20万人余、そして12日は80万人余の参加者だったという)の響きも、ここまでは聞こえては来ず。しかし、街中に何台も停めおかれている大型の警察車両の存在は、常ならぬ雰囲気を湛えてもいた。

大会に先立つ11日の夕方より、同じチョンノ区にある「シネマテーク」にて、ACEQとケベック州政府ソウル支部の共催によるグザヴィエ・ドラン・レトロスペクティヴを記念しての開会式が執り行われ、同支部代表ユ・チュンギョル(YOO Chun-Gyoll)氏によるあいさつののち、最新作『たかが世界の終わり』の上映へ。
およそ200席余の会場内はそれに先立つドラン作品『わたしはロランス』の上映から満員となっており、最新作のプレミア上映に際しても早くからチケットが売り切れてしまったそう。上映後のパク・ヒテ先生とイ・ナラ先生よるティーチインでも熱い討議が行われ、初日のプログラムが終了したのは22時30分頃のことだった。

そして翌12日、ソンギュングァン大学の奥まった会場にてACEQの第18回大会は行われた。
大会当日のプログラムは以下の通り。

 13:00 大会開始〜ハン・ヨンテク(HAN Yong-Taek)会長によるあいさつ
 13:30 Session 1 【 Modernité du Québec et Xavier Dolan 】
    “La modernité dans Le Survenant de Germaine Guèvremont”
      LEE Ji-Soon(Univ. Sungkyunkwan)
    “La réception du cinéma québécois et le phénomène Xavier Dolan au Japon”
      Katsuhiko SUGIHARA
    “Les cultures minoritaires dans les films de Xavier Dolan”
      LEE In-Sook (Univ. Hanyang)
 16:00 Session 2 【 Études microscopiques des films de Xavier Dolan 】
    “L'image de Mater Dolorosa dans les films de Xavier Dolan”
      LEE Nara (Univ. Korea)
    “Approche formelle des films de Xavier Dolan”
      PARK Heui-Tae (Univ. Sungkyunkwan)

 18時の終了時間まで、ドラン映画を中心にした発表とそれに対するデバが行われたのだが、前半の「セッション1」は主にドラン映画の背景となるケベックの社会と文化に焦点を合わせたもので、後半の「セッション2」ではドラン映画を細かく分析してゆく発表が中心となった。
 それら詳細については頁を改めて紹介したいと思うが、25名から30名弱というこぢんまりとした集まりではあったものの、中身は濃く、いずれも今後のケベック映画、ドラン映画を考えてゆく上での礎石になるものだった。
 
 大会後の打ち上げ(大学街にある伝統的韓国料理のレストランでの食事会)はもちろんのこと、ACEQのメンバーの方々──ハン・ヨンテク会長はもちろんのこと、イ・ジソン(LEE Ji-Soon)前会長、そしてもっともお世話になった今回の企画者であるパク・ヒテ先生をはじめとする方々には、「厚い」という以上に「熱い」歓迎と細やかなお気遣いをいただき、短い時間ではあったが、グザヴィエ・ドランをめぐる思いや研究を共有させていただくとともに、ひと足早いソウルの紅葉と、そして時ならぬ政治の季節を味わうことができ、感謝に堪えない。

ユ・チュンギョル ケベック州政府ソウル支部代表によるレトロスペクティヴ開会式あいさつハン・ヨンテク会長による第18回大会開会式
左:「ユ・チュンギョル ケベック州政府ソウル支部代表によるレトロスペクティヴ開会式あいさつ」
右:「ハン・ヨンテク会長による第18回大会開会式」

7月2日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ

7月2日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ(7/3、7/11改訂)
AJEQ研究会
日時:2016年7月2日(土)16:00~18:10
場所:立教大学 本館(1号館)2階1204教室
<プログラム>
第1発表:井村まなみ会員(群馬県立女子大学)
Tom à la ferme (Xavier Dolan)の詩的なもの:整合性と整合性で捉えられないもの」
第2発表:伊達聖伸会員(上智大学)
「フェルナン・デュモン『記憶の未来』を読む」
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井村まなみ会員の発表についての報告
Tom à la ferme (Xavier Dolan)の詩的なもの:整合性と整合性で捉えられないもの」(井村まなみ)                 
Michel Marc Bouchardによる同名の戯曲(2010年)をもとにつくられた、Xavier Dolan の映画Tom à la ferme (2013年)についての報告である。制作者側の解説は、同性愛にまつわる禁忌と偏見(ブシャール)、「恋人を救えなかった罪悪感から、暴力と不寛容のなかでストックホルム症候群に陥ってゆく主人公の物語」(ドラン)とあるように、もっぱら内容面に関わるのに対して、構成面からの理解が目的である。まず、整合性で説明できるモチーフとテーマ―直進と旋回の枠組み、車と牛の対称性、出発と喪のテーマの繰り返し―を整理した。特に、戯曲のシナリオを映画用に練り直している点、両者の比較に力点を置いた。ブシャールが限られた空間で展開するために言語の特性を駆使するなら、ドランはそれらを映像で支えながら、さらに発展させることで成功しているのである。
発表では次に、整合性では捉えられないもの、言語でも映像でも表わし難いことを浮かび上がらせようと試み、詩的なものとの関連を指摘した。
スクリーンに映像を映しながらの報告であり、報告後、会場からは活発な意見と質問をいただいた。この作品の持つ豊かさを改めて知ることになり、今後考察を深めるための指針としたい。

伊達聖伸会員の発表についての報告
「フェルナン・デュモン『記憶の未来』を読む」(伊達聖伸)
5月末に拙訳でフェルナン・デュモン『記憶の未来――伝統の解体と再生』(白水社、2016年)が刊行された。
本発表は、本書の概要を紹介し、訳者なりに重要と思われる論点をいくつか紹介したもので、会場との質疑応答になるべく多くの時間を費やすことを意識した。
「私たちの社会が未来を前にして無力になったのだとしたら、それは私たちの社会が記憶を失ったことに原因があるのではないか」。
この問いを前に、デュモンは現代社会においては慣習の解体が起こっているが、それは必ずしも伝統の解体ではないと論を進める。
記憶の危機は転じて好機にしうるものでもあり、著者はその希望を学校とデモクラシーに託す。
論点として挙げたのは、1)記憶喪失に抗して、歴史の果たすべき役割、2)人文科学の危機に抗して、学校の果たすべき役割、3)「デモクラシーに固有の専制」(トクヴィル)に抗して、「たえず再興すべき伝統」としてのデモクラシーをいかに構築するか、の3点である。
会場からは、記憶というテーマをめぐるケベックの特殊性と普遍性、フランス本国とその他のフランス語圏の国や地域の違い、国民的記憶のレフェランスとなるものの特徴などについて、いろいろな角度から質問やコメントをいただいた。
訳者としては、本書は反時代的なアクチュアリティを持つもので、現代の日本にとっても意味のあるものだと思う。お手に取っていただければ幸いである。
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写真:
井村まなみ会員の発表の様子
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伊達聖伸会員の発表の様子
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フェルナン・デュモン『記憶の未来』の表紙
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3月28日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ(4/1)

3月28日AJEQ研究会報告 Rapport de la réunion d’études de l’AJEQ(4/1)

日時:3月28日(土)16:00~18:30 le 28 mars 2016
場所:立教大学 6号館 6206教室 Université Rikkyo, Bât. 6, Salle 6206

1 小松祐子(筑波大学)「ケベックと他のカナダ・フランス語共同体との関係」
2 Robert TRUDEL(特別ゲストSecrétaire général-Québec, Comission franco-québécoise sur les lieux de mémoire communs) « Le cadre général des relations France-Québec, depuis 50 ans, des années 1960 à nos jours »(1960年代から今日までの半世紀にわたるフランス・ケベック関係の全体的枠組)

1 小松祐子会員の発表
「ケベックと他のカナダ・フランス語共同体との関係」
 ケベック以外のカナダのフランコフォン人口は約100万人で、ニューブランズウィック州のアカディアンやケベックに隣接するオンタリオ州のフランコフォンが多いが、他州にも少数派共同体として各地にフランコフォンが存在する。カナダ統計局の資料によれば、1951年から2011年までにカナダのフランコフォンが人口に占める割合は約11%の減少を記録している。しかし、そのなかでケベック州だけは約3%の増加となっている(101号法の成果がうかがわれる)。このように状況の異なるケベック州と他のマイノリティのフランコフォンとの関係を検討するのが今回の研究会のテーマであった。
 研究会では、両者の関係について簡単な研究史の紹介、歴史的経緯、現在の協力関係(とくに鍵となる組織)を概観した後、ケベック州と他州フランコフォン共同体との関係の複雑さを理解するための事例として、2015年1~2月にカナダおよびケベックのメディアを賑わせたユーコン準州のフランス語学校の入学許可に関する問題を紹介した。
 両者の関係については、1990年代から検討が開始され、詳しい研究はいまだ限られるが、2014年AJEQ大会の招聘講演者マルセル・マルテル教授の著作が歴史的観点からの研究として代表的である。マルテル教授が「奇妙な関係」と呼ぶ両者の関係については、1960年代以降、「緊張」「引裂かれ」「孤独」といった語によりしばしば表現されてきた。が、21世紀を迎え、新たな関係を予告する者もいる(J.-L.Roy, 2001)。
 両者には、かつて仏系カナダとしての共通のネイション意識が存在し、宗教界、民間ネットワークによる協力が盛んであった。しかし20世紀後半両者は徐々に別々の道を歩み、1967年の仏系カナダ大会を境に仏系カナダというアイデンティティは消滅し、各地のコミュニティごとのアイデンティティが模索されることとなった。60年代以降、ケベックは自州のアイデンティティ確立、とくに主権問題や国際舞台への進出を優先課題とし、他州フランコフォンを顧る余裕はなかった。一方、他のフランコフォンらは1975年Fédération des francophones hors-Québec (その後91年にFédération des communautés francophones et acadienne du Canadaと改称)を設立し結束を固めた。
 「静かな革命」以降のケベックでは、州政府(Etat)による社会整備が強化され、その成果は社会のフランス語化に大きく表れているが、フランコフォンとの関係についてもEtatが極めて重要な役割を果たすようになった。かつての宗教ネットワークにかわり、政府による協力が今日重要な位置を占めている。ケベック州のSAIC(Secrétariat aux affaires intergouvernementales)が他のフランコフォン共同体組織との対話者となり、90年代後半以降、各種支援プログラムを実施している。またケベック州政府は2008年にCentre de la francophonie des Amériquesを開設し、アメリカ大陸全体のフランコフォニーに対する責任を果たそうという意欲を示している。このように州政府主導の活動が前面に見られる一方で、20世紀前半から活動する民間ネットワーク組織(例としてAssociation canadienne d’éducation de langue françaiseを挙げた)も続けられている。
 もう一つのEtatである連邦政府の介入も、少数派フランコフォンとケベック州との関係を複雑にしている。1969年連邦公用語法による連邦政府の公用語プログラム、1982年「権利及び自由に関する憲章」23条による教育権に関する規定が挙げられる。
 23条をめぐっては、複数のフランコフォン共同体が各州政府を相手に訴訟を継続中であるが、なかでもユーコン準州政府とフランス語教育委員会とが争うカナダ最高裁での係争について、2015年1月にケベック州政府が行った介入が注目を浴びた。ケベック州は州内の公用語マイノリティであるアングロフォンへの影響を恐れて、他州フランコフォンの立場を支持できない事情がある。
 フランス語憲章から約40年を経て、州内のフランス語化にひとまずの成功を収めたと思われるケベック州に対しては、他州で英語化の脅威に苦しむフランコフォンに対する支援の期待が高まるが、自州の状況に常に警戒を怠ることができないケベック州の状況、そしてEtatに頼る協力の制度上の限界もが理解されるのである。(文責:小松祐子:本発表は2014年度小畑ケベック研究奨励賞の助成を受け、2015年2-3月にケベックにて行った調査の成果をもとにしたものである)

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2 Robert TRUDEL氏の講演
Le 28 mars 2016, lors de son passage à Tokyo, M. Robert Trudel, ancien premier conseiller politique à la délégation générale du Québec à Paris (2004-2008) et actuel secrétaire général-Québec de la CFQLMC (2015-), a bien voulu venir à la réunion d’études de l’AJEQ et donner une conférence sur le développement des relations franco-québécoises depuis 50 ans ainsi que les activités de la comission. Une quinzaine de membres de l’AJEQ ont participé à la réunion et la conférence a été suivie d’une discussion passionnante.
2月初め、学会事務局に「フランス=ケベック共通の記憶の場委員会」のケベック側事務局長Robert Trudel氏から講演の申し出が舞い込んだ。あいにく大学で講演会を開催するのが難しい時期だったため、今回の研究会にお招きすることになった。Trudel氏は長年ケベック州政府国際関係省に勤務し、ヨーロッパ各国の代表事務所勤務を経験した方である(2004年~2008年、在パリ代表事務所)。「共通の記憶の場委員会」は1997年にフランスとケベックのあいだで発足した委員会で、氏は2015年からそこのケベック側事務局長を務めている。
氏には、「静かな革命」以降、現在までの半世紀のあいだにケベックとフランスの関係がいかに変化してきたか、現在どのような関係が築かれているかなどについて、委員会の活動との関わりでお話しいただいた。「共通の記憶の場」というのは、ケベック市のPlace Royaleのような実際の場所だけでなく、歴史的な出来事、filles du roiのような人物、文学作品や歌のような無形文化財など様々なものを含む。委員会の活動は、それらを掘り起こし、目録を作成し、記念の年にシンポジウムや展覧会を開催し、ネットや出版物で広報するなど、多岐にわたる。
1967年にド・ゴール大統領がケベックを公式訪問してから来年で50年。そのときの言葉(今フランスがケベックにたいして行う支援は、将来何倍にもなって返ってくるだろう)は現実のものとなり、今やケベックとフランスは様々なかたちで対等な協力関係を築いているばかりか、留学生数などについては完全な輸入超過状態である。ケベックはフランスにとって、政治・経済的にも、言語・文化的にも北米における重要な足場となっている。かつてアブラハム平原での戦いに援軍を送らなかったフランスにたいしてケベックの人々が抱いていた恨みの念は、250年の時を経て「記憶の場」の奥深くに眠るときが来たようだ。(文責:小倉和子)
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(写真撮影:河野美奈子)

2月13日・AJEQ西日本地区第1回研究会報告

日本ケベック学会・西日本地区第1回研究会(ベルギー研究会共催)報告(2/16)

丹羽 卓(AJEQ西日本地区第1回研究会企画委員長)

2月13日(土)午後1時から5時30分まで、阪南大学あべのハルカスキャンパスにおきまして、標記の研究会を開催しました。
ケベック学会はこれまで数か月に1度の頻度で研究会を行ってきましたが、会場はいずれも東京だったため、時には西日本でも開催をという理事会の意向を受け、西日本在住の真田理事、大石理事および私の3名が立案にあたりました。ただ、西日本のケベック学会員の数はごく限られているため、充実した研究会とするためベルギー研究会の協力を得ることとしました。その結果、ベルギー研究会の岩本和子会長も企画・運営委員にお加わりくださることになり、計4名で企画・運営にあたりました。
話し合いの結果、研究会タイトルは「多言語社会ケベックとベルギー ― その言語状況と舞台芸術」とし、4名の発表者を得ることができました。発表タイトルと合わせて次に記します。

第1部「ケベックとベルギーの言語状況」
大石太郎氏(関西学院大学) 「ケベックのアングロフォン―現状と今後の展望―」
石部尚登氏(日本大学) 「ベルギーの言語としてのフランス語―ワロン運動におけ る言語観から」

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第2部「ケベックとベルギーの舞台芸術」
髙橋信良氏(千葉大学) 「ベルギーの現代舞台芸術——教育と情報が果たす役割」
藤井慎太郎氏(早稲田大学) 「ケベックの地域主義・文化政策・舞台芸術」

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第1部は司会を岩本和子氏(神戸大学)、コメンテーターを真田桂子氏(阪南大学)が、第2部は司会を真田氏、コメンテーターを岩本氏が務めてくださいました。そして、私が全体の司会にあたりました。真田理事には運営委員長もお引き受けいただき、実施にあたり多方面で世話いただきました(会場として、阪南大学あべのハルカスキャンパスの真新しい部屋を使用させていただけたのも、真田理事のおかげです)。
参加者は大阪近辺のみならず、東京や広島からもあり、総勢24名での会となりました。小倉会長にもご多忙な公務の日程の間をぬってご参加いただけたことは、私どもにとって大きな励ましでした。
研究会の詳細な報告は、3月末発行予定のニューズレターでなされますので、そちらに譲ることにし、今回の研究会は発表が充実していただけでなく、非常に活発な意見交換がなされ、4時間半の予定時間では足りないくらいだったことだけお伝えしておきます。さらに、ケベックとベルギーという異なる地域の比較研究が豊かな実りを生むという可能性が見えたという点でも、この研究会の開催意義があったと思います。
最後に、ここで名前を挙げた方々以外にも多数の方のご助力を得て、研究会を無事開催できたことを感謝とともに申し添えます。

参考:
その他の写真については、以下のAJEQ写真集ブログをご覧ください。写真提供:大石太郎氏(関西学院大学)
http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2016-02-16
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11月28日 AJEQ研究会報告

11月28日 AJEQ研究会報告(11/28)

日時:11月28日(土)16:00~18:30
場所:立教大学 5号館 5126教室

1 佐々木菜緒・仲村愛(明治大学大学院)
「静かな革命前後のケベック人意識:文芸雑誌にみるネイション意識と過去」
2 片山幹生(早稲田大学)
「現代ケベック演劇の日本公演について:ブシャール、ムワワド、ルパージュの三人の劇作家の作品を中心に」
          
1 佐々木菜緒会員・仲村愛会員の発表
本発表では、ケベックにおける「静かな革命」の意味と「ネイション意識」の変容を文芸雑誌を通して明らかにする第一歩として、「静かな革命」という代名詞の由来の再考、および研究対象とする3つの雑誌の要旨について報告を行った。
まず、「静かな革命」という表現は、最初にGlobe and Mailの記者が記事の中で使用したのが起源という通説には根拠がなく、それより以前の1950年代から、特にアメリカで様々な意味でよく用いられていたことが明らかにされた。
次に、ケベック史における転換点の1950~70年代を代表する3誌(Cité libre, Liberté, Parti pris)の概要が説明され、なかでもParti pris誌が短命であったにもかかわらず(1963~68年)、特に「政治革命」や「ネイション意識」を強調して政治的なアクションを主張したという意味で、重要な役割を果たしたことが指摘された。今後さらに研究を進めて、所期の目的の達成を目指すとのことであった。
質疑応答では、Parti pris誌がどのような形で終息し、解消されたのかを詳しく研究することが、その後の政治運動やネイション意識の変容についてヒントを与えてくれるのではないかといった意見などが出された。

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2 片山幹生会員の発表
本発表では、ケベック出身の3名の劇作家(ロベール・ルパージュ、ワジディ・ムワワド、ミシェル=マルク・ブシャール)について、最近5年ほどの間に日本で公演された作品を紹介して、ケベックの演劇の特色と貢献を探ることが試みられた。
日本で最も有名なルパージュについては、最新の作品『針とアヘン』を紹介しつつ、ポリグラフの使用の巧みさなどを評価する一方で、彼のようにビジュアルな面を強調して言語の壁を乗り越えたことがケベック演劇の特色であるかのような説には賛同できないとのことであった。
むしろ、ムワワドや特にブシャールの作品に見られるような、フランス語の伝統や古典への回帰、およびその新しい可能性の追求が、より重要なケベック演劇の貢献とも考えられる。それは80年代以降、フランスよりはケベックで見るべき劇作家と演劇が出てきていることを象徴しているというのが結論であった。
質疑応答では、取り上げられた三者の作風はそれぞれ非常に異なるものであり、そのことがケベック演劇の幅広さと奥深さを示しているのではないかという指摘などがあった。

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(文責・写真撮影:宮尾尊弘)

AJEQ 2015年全国大会: Congrès annuel de l'AJÉQ-2015

AJEQ 2015年全国大会: Congrès annuel de l'AJÉQ-2015 (10/3) 

2015 年 10 月 3 日(土): Samedi 3 octobre 2015
会場:跡見学園女子大学(文京キャンパス)2号館4階2401教室:
Lieu: Université Atomi, Otsuka, Bunkyo-ku, Tokyo; Pavillion 2, Salle 2401

挨拶:クレール・ドゥロンジエ代表(ケベック州政府在日事務所): Claire DERONZIER (Déléguée générale du Québec à Tokyo)
小倉和子AJEQ会長(立教大学): OGURA Kazuko (Présidente de l’AJEQ, Université Rikkyo)
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基調講演 Conférence
L’intégration scolaire des immigrants et l’éducation interculturelle au Québec : contexte, débats, résultats(ケベックの学校における移民の統合と間文化的教育:その背景・議論・成果)
マリー・マカンドルー教授(モンレアル大学):Marie MC ANDREW (Université de Montréal)
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シンポジウム Symposium「間文化主義再考」
L’interculturalisme aujourd’hui : quelques réflexions sur sa naissance, son développement et ses polémiques
飯笹佐代子(東北文化学園大学)IIZASA Sayoko (Université Tohoku Bunka Gakuen), スティーヴ・コルベイユ(静岡大学)Steve CORBEIL (Université de Shizuoka), 曽田修司(跡見学園女子大学)SOTA Shuji (Université Atomi), 廣松勲(法政大学)HIROMATSU Isao (Université Hosei)
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全国大会写真集:http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
全国大会写真集(改定版):http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2015-10-04
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7月4日 AJEQ研究会

7月4日 AJEQ研究会報告 (7/12)

日時:7月4日(土)16:00-18:30
場所:立教大学1号館1201教室

1 矢頭典枝(神田外語大学)、古地順一郎(北海道教育大学)
「2015年度AJEQ大会ワークショップ勉強会:州民投票から20年―ケベック内政を振り返る」
2 河野美奈子(立教大学大学院)、佐々木菜緒(明治大学大学院)
「人を殺すまで—A. エベールとM. デュラスの文学作品に転化された実在事件に関する比較研究」
          
1.矢頭会員・古地会員の発表
 この発表は、2015年度AJEQ大会で予定されているワークショップ「州民投票から20年ーケベック内政を振り返る」の勉強会を兼ねたものであった。
 まずはじめに、矢頭会員より、1995年の州民投票に至る過程の歴史が紹介された。1995年のケベックの主権を問う州民投票では投票率が93%と高く、ケベックの人々の関心が非常に高かったとの指摘があった。また、1995年の州民投票に至った過程として、1982年のカナダ憲法への署名をケベックが拒否したこと、1987年のミーチレーク合意や1992年のシャーロットタウン合意が廃案になったことなどを背景に、ケベックが主権を主張する機運が非常に高まっていたことが詳しく説明された。また、当時のケベック党のブシャール党首によるケベックの主権構想やカナダとのパートナーシップ構想などについて説明がなされた。
 続いての古地会員の発表では、最新のケベックについてのニュースをもとに、州民投票から20年経ったケベックの政治的状況が説明された。まずは、近年のケベックの状況として、ケベック党のぺラドー党首とケベック連合のデュセップ党首のそれぞれの主張が紹介された。また、州民投票以降の「ケベック主権」支持率の調査について、反対派が賛成派を上回っている状態が続いているとの説明があった。さらに今後は、急進派が後退していくことが予想されること、そして左右共同戦線の状態が築けるかど
うかが注目されるとの指摘があった。また、ケベックの人々のアイデンティティに関して、より包摂的な言説が展開されるかどうかも注視していきたいとのことであった。

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2.河野会員・佐々木会員の発表
 この発表は、ケベック生まれの作家アンヌ・エベールと仏領インドシナ生まれのマルグリット・デュラスの作品において実在の事件をもとにした小説を比較分析したものであった。
 はじめに、佐々木会員によるアンヌ・エベールの作品『シロカツオドリ』についての分析があった。まず、この作品で起こる事件と、実際に1933年にケベックで起こった「アズカー事件」と呼ばれる二人の少女が行方不明になった事件についての類似点と相違点が検証された。そこから、実在の殺害事件をもとにつくられたエベールの作品は、何が「人を殺す」という行為に至らせたのかが重要な要素となっているとの指摘があった。
 続いて、河野会員によるデュラスの『ヴィオルヌの犯罪』の分析があった。まず、実際に起こった様々な事件とデュラスの作家活動の関係が時系列に沿ってまとめられた。その上で、1949年におこった「ラビュー事件」とデュラスの作品『ヴィオルヌの犯罪』が比較検証された。またこの作品の背景として、デュラスが犯罪を書くということに対してどのような立場を取っていたかが、インタビューなどをもとに分析された。
 最後にこの比較研究のまとめとして、三面記事をもとに文学作品を描く二人の女性作家についての比較検討がなされた。エベールの方は社会的一面を描き、デュラスの方は人間の内面の普遍性を描こうとしているのではないか、との指摘がなされた。

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(文責・写真撮影 : 山出裕子)

AJEQ研究会(3/28)

AJEQ研究会 3月28日:「スティーブ・コルベイユ会員、山出裕子会員の発表」(4/2)

日時:3月28日(土)16:30-18:30
場所:立教大学6号館6206教室
1.スティーブ・コルベイユ会員の研究発表「ケベック文学における主権と間文化主義の表象~教育現場からの文学論~」
2.山出裕子会員の研究発表「ドキュメンタリードラマに見るケベック移民のアイデンティティ形成過程-Hejer Charf監督の Les Passeurs (2003)を例に-」

1.スティーブ・コルベイユ会員の研究発表
今回の研究発表は、10月3日(土)に跡見学園女子大学にて開催される予定のAJEQ大会におけるシンポジウムのテーマである「間文化主義再考」(仮)の勉強会を兼ねたものであった。
コルベイユ会員の発表では、実際にケベックの教育システムにおいて教育を受け、また、フランス語の教員としてケベックの学校で教壇に立った経験から、ケベックの教育現場における問題点や「間文化主義」の在り方について、文学研究の立場からの詳しい説明があった。
まず初めに、ケベックの中・高等学校とCÉGEPにおけるフランス語と文学教育についての現状報告があった。コルベイユ会員によれば、現在のケベックの教育制度では、ケベックの学校で教える内容については担当教員の裁量に頼るところが大きく、生徒によっては古典的文学に触れることなく、初・中等教育を終えてしまうなど、問題が多いことが指摘された。また、ケベックで制作された映画『ぼくたちのムッシュ・ラザール』(2011)などを例に、ケベックの教育現場における問題やこの作品に見られる「間文化主義」の特徴についての指摘があった。 
さらに、ケベックの作家であるガストン・ミロンやオクターヴ・クレマジーの作品を例に、ケベックの教育現場において、ケベックの特に古典的文学を教えることの必要性が説明された。コルベイユ会員によれば、現在のケベックの教育現場では、「文学」と扱うことができるかどうか判然としないような作品が盛んに読まれており、また、「移動文学」の隆盛により、「ケベック文学」の在り方が変化していることが指摘された。

2.山出裕子会員の研究発表
山出会員の研究発表では、山出会員がケベックの女性作家Nadine Ltaif氏にモントリオールで会った際に贈られた、ケベックの(新)移民を取り扱ったドキュメンタリー・ドラマ映画Les Passeurs(2003)の紹介と、この作品に見られるケベック移民のアイデンティティの形成過程に関する分析があった。
まず初めに、この作品の作られた背景となるモントリオールにおける移民社会の現状、この作品を監督したHejer Charf監督について、また、「ドキュメンタリー・ドラマ」という作品の特徴についての説明があった。
さらに、この作品のドキュメンタリーの部分に注目し、特に「新移民」とされる、インド系やラオス系の移民たちのインタビューについて、彼らが自分たちのアイデンティティをはっきりと「ケベック人」である、と述べていることの背景には、ケベックのフランス語の言語政策と「間文化主義」の文化政策の影響があるのではないか、との分析が示された。この作品では、ケベック映画 Le chat dans le sac(1964)が挿入されており、移民監督の手によってケベックの「伝統的」映画が<再生>されていることは、この作品が「間文化的」特徴を持っていることなどが指摘された。(研究会の写真は以下に掲載)。(文責:山出裕子)

 コルベイユ会員の発表の様子

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 山出会員の発表の様子

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AJEQ 研究会(12/6)

AJEQ研究会(12/6)「小畑先生一周忌の会」、「山口いずみ会員の発表」(12/8)

日時:12月6日(土)16:30-18:00
場所:立教大学本館1号館1101
1.「小畑先生一周忌の会」
2.「山口いずみ会員の研究発表『中国系ケベコワのアイデンティティに関する一考察―ライフステージの移行に着目して』」

1.「小畑先生一周忌の会」
去る、11月22日は前ケベック学会長の故小畑精和先生の一周忌であった。この日を記念し、AJEQでは「小畑精和先生追悼論集」と、インタビューシリーズ「日本のケベック研究」の電子書籍が出版されたことが、報告された。
まず、「小畑精和先生追悼論集」は、小畑先生のご遺族の寄付により出版可能となったことから、研究会の前に行われた「お昼の会」にご遺族を招待したことが報告された。ここには、AJEQを代表して、AJEQ会長、副会長、追悼論集編集委員会のメンバーが出席し、ご遺族にご寄付に対する感謝の意を表し、追悼論集30部を謹呈した。その際、ご遺族からビデオメッセージをいただき、その模様を「一周忌の会」で紹介した。
また、「日本のケベック研究」の電子書籍が出版されたことが報告され、小倉会長から、その活用例などが示された。
(一周忌の会の写真は下に掲載)
2.「山口いずみ会員の研究発表」
山口会員の今回の研究発表は、昨年、小畑ケベック研究奨励賞を受賞した際の副賞を使って、ケベックにて行った在外調査の成果をまとめたものであった。
今回の発表では、この研究が、山口会員が博士論文執筆の際に行った研究の追跡調査であることが明らかにされた。まず初めに、山口会員の博士論文の概要が示された。そこで、山口会員の研究におけるリサーチクエスチョンが、1、「モントリオールにおける中国系はどのようにアイデンティティを認識し(シノワである、ケベコワである、カナディアンである)、経験しているか」、2、「それらの認識や経験は彼ら自身のアイデンティティをどのように構成しているか」、の2点であったことが明らかにされた。そして、そのおよそ10年後に行われた追跡調査での内容が示された。追跡調査の分析結果として、リサーチクエスチョン2に対して、多くはアイデンティティの認識に変化は現われていなかったが、最初の調査で、「シノワ・アイデンティティ」を示していた協力者のうち二人が、「反応型」から「自然化型」に移行しているとの分析結果が明らかにされた。さらに、「ケベック・アイデンティティ」を示していた協力者のうちの一人が「共同体型」から「個人型」へ移行しているとの分析が示された。1つ目のリサーチクエスチョンについては、協力者のうち3名が「普遍主義型」へ移行しているとの分析結果が明らかにされた。なお、1つめのクエスチョンについて、変化が見られないというのは、ライフステージの変化により、心身の発達や、社会的役割が変化したことがその理由として挙げられた。また、普遍主義への収斂の傾向が見られるのは、ケベック社会の「多文化主義/間文化主義」社会化のためではないか、との見解が示された。
発表後の質疑応答では、山口会員の10年以上に及ぶ根気強い研究調査に対する敬意が示されると共に、博士課程での研究調査の際に行われた対象者の絞込みの方法や、「ケベックのアジア系」移民という独創的なテーマに興味関心を持った理由などに関する質問があった(研究会の写真は以下に掲載)。
(文責:山出裕子)

小畑先生一周忌の会
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山口会員の研究発表会
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AJEQ 2014年全国大会: Congrès annuel de l'AJÉQ-2014

AJEQ 2014年全国大会: Congrès annuel de l'AJÉQ-2014 (10/13)

2014 年 10 月 12 日(日): Dimanche 12 octobre 2014
会場:立教大学 マキムホール M201 教室: Lieu: McKim Hall M201 Université Rikkyo
大会プログラム Programme
10:00-10 :15 開会 Ouverture
開会の辞 小倉和子会長(立教大学): OGURA Kazuko (Université Rikkyo)
挨拶 クレール・ドゥロンジエ代表(ケベック州政府在日事務所): Claire DERONZIER (Déléguée générale du Québec au Japon); 代理 天野僖巳(文化教育担当官): AMANO Kimi (Attachée culture et éducation)
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10:15-11 :45 自由論題セッション Communications
司会 Modératrice:山出裕子(明治大学): YAMADE Yuko (Université Meiji)
(1)「1950-1960年代のラジオ・カナダによる芸術音楽放送―ヨーロッパ現代音楽を中心に」
La diffusion de la musique classique par la Société Radio-Canada dans les années 1950-1960 : autour de la situation de la musique contemporaine européenne
平野貴俊(東京芸術大学大学院): HIRANO Takatoshi (Université des Arts de Tokyo)
(2) 「ケベコワの多くは本当にラシストなのか?―間文化主義の現在を問う」
La majorité des Québécois sont-ils vraiment racistes ? ― Revoir la situation présente de l’interculturalisme au Québec
丹羽 卓(金城学院大学): NIWA Takashi (Université Kinjo Gakuin)
(3) Révolution tranquille 10 ans après : Évolution et transformation au cinéma québécois
「静かな革命の10年後―ケベック映画における進展と変容」(フランス語)
PARK Heui-Tae(Université de Korea): パク・ヒテ(高麗大学)
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13 :00-14 :15 基調講演 Conférence
L’étrangeté des rapports entre le Québec et les communautés francophones en milieu minoritaire : perspectives historiques
「ケベックとフランコフォンの少数派共同体との奇妙な関係―歴史的観点から」(フランス語)
講演者 Marcel Martel (Université York): マルセル・マルテル(ヨーク大学歴史学部教授)
司会・通訳 Présentatrice & Interprète:小松祐子(筑波大学): KOMATSU Sachiko (Université de Tsukuba)
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14 :30-16 :30 シンポジウム「フランコフォニーとケベック」
司会・コーディネーター Modérateur & Coordinateur:長谷川秀樹(横浜国立大学): HASEGAWA Hideki (Université nationale de Yokohama)
コメンテーター Commentatrice:
クレール・ドゥロンジエ代表(ケベック州政府在日事務所): Claire DERONZIER (Déléguée générale du Québec au Japon); 代理 マルク・ベリヴォー(広報担当官): Mark BELIVEAU (Ataché aux affaires publiques)
(1)「フランス語圏内で存在感を増すケベック-国際フランス語記者連合(UPF)
の視点から見て」
Le Québec, poids lourd au sein de la francophonie, vu par l’UPF (Union internationale de la presse francophone)
谷口 侑(ジャーナリスト 国際フランス語記者連合(本部在パリ)国際委員会委員): TANIGUCHI Susumu (journaliste, membre du comité international de l’UPF)
(2)「フランス語は本当にビジネスに適していないのか?」
Le français ne convient-il pas à la communication des affaires ?
瀬藤澄彦(帝京大学): SETO Sumihiko (Université Teikyo)
(3) 「chocolat ポッドキャストでフランコフォンをめぐる」
La francophonie dans les sujets du podcast Chocolat !
ボブ・レナス(redたんぽぽ有限会社 プロデューサー): Bob LEENAERS (redTanpopo, producteur)
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参考: 他の写真および州政府在日事務所からのコメントについては、以下の「AJEQ写真集ブログ」を参照:
http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2014-10-13
(Photos: Miyao)
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参加者の集合写真(安田会員撮影):Photo des participants (Photo: Yasuda)
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AJEQ研究会(7/5)の古地会員、杉原氏の発表

AJEQ研究会(7/5)の古地会員、杉原氏の発表(7/6)

日時:7月5日(土)16:30-18:30
場所:立教大学本館1号館1204
タイトル(報告者):
1.「ケベック州議会選挙とその後に関する時事評論」(古地順一郎会員)
2.「ケベック映画のヌーヴェル・ヴァーグ~ミシェル・ブローからグザヴィエ・ドランまで」(杉原賢彦氏、特別ゲスト・映画批評/大学講師)

発表の概要:
1.2014年4月7日に行われたケベック州議会総選挙において与党ケベック党は大敗を喫し、P. クイヤール率いるケベック自由党が1年8カ月ぶりに政権の座に返り咲いた。議席数は、ケベック自由党が選挙前の49から70議席へと増加し、それに対してケベック党は54から30議席へと激減した。ケベック自由党の得票率は前回に比べると大きく伸びているものの、過去30年間の州議会選挙の得票率を見ると、これら主要二政党の得票率は以前に比べて漸減傾向にあり、代わってケベック未来連合党(18から22議席へ)やケベック連帯党(2から3議席へ)の得票率が増えてきていることは興味深い。
 ケベック党大敗の理由の一つとしては、「ケベック価値憲章」の提案にみられるように、アイデンティティをめぐる政治の争点化に拘泥したことが挙げられよう。現実にはケベック州民は経済・雇用問題や医療、財政により関心を寄せていた。もっともケベック党も経済政策の重視を打ち出すためにメディア王と称されるP.K. ペラドーを有力候補として起用したが、彼がケベックの独立を公言したがために裏目に出てしまった。実際に世論調査では、若者の多くが「主権問題」を時代遅れで非現実的なものとみなしていることが示されている。
 今後、クイヤール・ケベック自由党政権は経済、雇用面の政策を重視しつつ、連邦政府との協働を推進していくだろう。一方、主としてベビーブーマー世代に支持されてきた「主権運動」の世代間継承に困難を抱えるなかで、ケベック党が自らの立ち位置をどのように再定義し、党の立て直しを図っていくのかが注目される。
 質疑応答では、ケベック価値憲章の支持層やその選挙対策としての意味、また主権構想のゆくえ等についてやりとりがあった。(文責:飯笹佐代子)

2.カナダ最初の映画は1897年のカナダを紹介するドキュメンタリー映画であった。1939年に「カナダ人およびその他の国々に対し、カナダを理解してもらうため」世界に先駆けた映画振興政策が採られ、国立の映画庁が設立されたが、このカナダ国立映画庁(NFB/ONF)設立時の運営責任者には、英国人ドキュメンタリー映画作家ジョン・グリアスンが招聘された。カナダではドキュメンタリー映画の伝統があることが理解される。
 最初のケベック映画は1958年ミシェル・ブローらによるケベック・ウインターフェスティバルを扱った『Les Raquetteurs』であった。この作品は広角レンズを備えた小型の手持ちカメラと録音機とを使用し、初の同時録音による映画作品であった(通常の劇映画はほぼすべてアフレコである)。このような手法は「ダイレクト・シネマ」と呼ばれ、それまでの望遠レンズを用いて対象を外から撮影するドキュメンタリー映画とは大きく異なり、人々のなかに入り込み、撮影する者とされる者とのあいだの相互了解を前提とする。この手法は、ピエール・ペロー、クロード・ジュトラらはじめ、ONF内において共有され、ケベック映画の大きな特徴となった。ダイレクト・シネマはフランスで1960年代にシネマ・ヴェリテ(たとえばジャン・ルーシュ作品)へ多大な影響を与えることとなった。
 60年代以降、ケベックを代表する国民的映画監督となったジュトラは、ケベック社会を映すドキュメンタリー映画作家として重要であるとともに、『À tout prendre』(1963年)、『Mon oncle Antoine』(1971年)など、劇映画においても高い評価を得ている。
 ケベック映画には政治、移民問題など社会のさまざまな要素が絡まりながら作品が構成されているという特徴がある。2009年以降は若き天才グザヴィエ・ドランが相次ぎ話題作を発表し、注目を集めている。これまでケベック映画の日本紹介は限られていたが、ドラン作品は5本中4本が日本で公開されている(うち1本は今秋公開予定)。Youtube上にはONFのチャンネルが設定されており(https://www.youtube.com/user/onf)、ケベック作品を知ることができることが紹介された。研究会最後には、『Les Raquetteurs』やジュトラの1969年作品『WOW』などの作品抜粋を鑑賞した。(文責:小松祐子)

古地会員の発表
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杉原氏の発表
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会場の様子
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AJEQ研究会(4/26)の荒木会員発表の写真と報告

AJEQ研究会(4/26)の荒木会員発表の写真と報告:(4/27、改定4/28)

AJEQ研究会が、4月26日(土)の17:00~18:45に、立教大学の6号館6305教室で行われました。
今回の発表者は、荒木隆人会員(京都大学)で、以下のテーマで報告がありました。
テーマ
「カナダ連邦政治とケベック政治闘争ーカナダ1982年憲法を巡る政治過程ー」
(発表の要旨は以下の写真集の後に掲載)

新緑の季節の立教大学正門の風景と研究会で荒木隆人会員を紹介する矢頭理事
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荒木会員の発表と研究会参加者(計18名)の様子
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質疑応答の様子:仲村愛会員(写真左)と加藤普理事(写真右)による質問
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発表の要旨
 「マルチナショナル連邦制」を、2つ以上のネイションが一つの政治体の下で共存しうる連邦制と定義した上で、マイノリティ・ネイションとして独自の性格を持つケベック州が連邦政府と「憲法闘争」を繰り広げた1960~80年代の政治過程に焦点を当てて、その今日的意義を見出だそうとする発表であった。
 より具体的には、カナダにおけるケベック州政府が主張した憲法構想である「特別の地位」や「主権連合」という立場と、個人の権利を基にしてこれらの構想を認めないトルドーの「均等連邦制」の立場が対立を続けた歴史を詳細に分析し、ケベック州の立場が言語などの「集団的権利」を優先し、議会による政治的な保証を求めたのに対して、トルドーはあくまで個人的な権利を重視し、司法の決定が最終的な判断になるという点で、根本的な違いがあるように見えることを指摘した。
 しかしながら、結論としては、「憲法闘争」におけるケベック側の代表者であったレヴェックが主張する立場を詳しく調べると、それは必ずしも言語のような集団的な権利を個人的権利よりも優先させる考え方ではなく、むしろ個人の権利を言語という手段を通じて実現しようとする面も強く持っており、そこに注目すれば、レヴェックが主張した立場は、個人的な権利と集団的な権利を相互補完的に発展させるというアプローチと解釈できる。そこでは、個人的権利が絶え間なく変化し、その権利を定める上ですべての個人が参加できる政治制度が要請されている。以上のように、ケベック州が主張する言語権を再検討することで、マルチナショナル連邦制に正当性を付与することができるのではないか、というのが発表の趣旨であった。
(宮尾の要旨案を発表者荒木会員が加筆修正 4/28)

AJEQ研究会(3月8日):陶山会員と小倉会員の発表

AJEQ研究会(3月8日):陶山会員と小倉会員の発表(3/9)

日時:3月8日(土)17:00-18:30
場所:立教大学5号館2階5021
タイトル(報告者)
1.「ケベックとスコットランドのナショナリズムの系譜」(陶山宣明会員)
2.「ダニー・ラフェリエールのアカデミー・フランセーズ入り」(小倉和子会員)
発表の概要
1. 陶山会員は、「独立運動」という共通点を持つケベックとスコットランドのナショナリズムの系譜を、両地域の歴史的・制度的および政治的・社会的な違いに焦点を当てて、ケベックの伝統的な「エスノ・ナショナリズム」とスコットランドの「シヴィック・ナショナリズム」を対比させた。ケベックが今後どのように第三の高次のナショナリズムである「マルチ(インター)カルチュラル・ナショナリズム」を展開できるかに注目する発表であった。
質疑応答では、そのような比較研究の意味と今後の展開についてのやりとりがあった。
2. 小倉会員は、1635年設立というフランスの伝統ある「アカデミー・フランセーズ」について(女性や外国人のような少数派会員にも触れて)説明した後、今回フランスとの直接の関係がないフランコフォニーのダニー・ラフェリエールがアカデミー会員に選出されたことの意義と、それを巡るマスコミの反応とケベックでの賛否両論を紹介した。
質疑応答は、もっぱらダニー・ラフェリエール自身がどのようにアカデミー・フランセーズを見ているか、また今後どのように振舞うのかに集中した。(文責:宮尾)

陶山会員の発表と質疑応答の写真
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小倉会員の発表の写真
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プロフィール

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Author:AJEQ: www.ajeqsite.org/
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