AJEQ研究会 3月28日:「スティーブ・コルベイユ会員、山出裕子会員の発表」(4/2)日時:3月28日(土)16:30-18:30
場所:立教大学6号館6206教室
1.スティーブ・コルベイユ会員の研究発表「ケベック文学における主権と間文化主義の表象~教育現場からの文学論~」
2.山出裕子会員の研究発表「ドキュメンタリードラマに見るケベック移民のアイデンティティ形成過程-Hejer Charf監督の
Les Passeurs (2003)を例に-」
1.スティーブ・コルベイユ会員の研究発表今回の研究発表は、10月3日(土)に跡見学園女子大学にて開催される予定のAJEQ大会におけるシンポジウムのテーマである「間文化主義再考」(仮)の勉強会を兼ねたものであった。
コルベイユ会員の発表では、実際にケベックの教育システムにおいて教育を受け、また、フランス語の教員としてケベックの学校で教壇に立った経験から、ケベックの教育現場における問題点や「間文化主義」の在り方について、文学研究の立場からの詳しい説明があった。
まず初めに、ケベックの中・高等学校とCÉGEPにおけるフランス語と文学教育についての現状報告があった。コルベイユ会員によれば、現在のケベックの教育制度では、ケベックの学校で教える内容については担当教員の裁量に頼るところが大きく、生徒によっては古典的文学に触れることなく、初・中等教育を終えてしまうなど、問題が多いことが指摘された。また、ケベックで制作された映画『ぼくたちのムッシュ・ラザール』(2011)などを例に、ケベックの教育現場における問題やこの作品に見られる「間文化主義」の特徴についての指摘があった。
さらに、ケベックの作家であるガストン・ミロンやオクターヴ・クレマジーの作品を例に、ケベックの教育現場において、ケベックの特に古典的文学を教えることの必要性が説明された。コルベイユ会員によれば、現在のケベックの教育現場では、「文学」と扱うことができるかどうか判然としないような作品が盛んに読まれており、また、「移動文学」の隆盛により、「ケベック文学」の在り方が変化していることが指摘された。
2.山出裕子会員の研究発表山出会員の研究発表では、山出会員がケベックの女性作家Nadine Ltaif氏にモントリオールで会った際に贈られた、ケベックの(新)移民を取り扱ったドキュメンタリー・ドラマ映画
Les Passeurs(2003)の紹介と、この作品に見られるケベック移民のアイデンティティの形成過程に関する分析があった。
まず初めに、この作品の作られた背景となるモントリオールにおける移民社会の現状、この作品を監督したHejer Charf監督について、また、「ドキュメンタリー・ドラマ」という作品の特徴についての説明があった。
さらに、この作品のドキュメンタリーの部分に注目し、特に「新移民」とされる、インド系やラオス系の移民たちのインタビューについて、彼らが自分たちのアイデンティティをはっきりと「ケベック人」である、と述べていることの背景には、ケベックのフランス語の言語政策と「間文化主義」の文化政策の影響があるのではないか、との分析が示された。この作品では、ケベック映画
Le chat dans le sac(1964)が挿入されており、移民監督の手によってケベックの「伝統的」映画が<再生>されていることは、この作品が「間文化的」特徴を持っていることなどが指摘された。(研究会の写真は以下に掲載)。(文責:山出裕子)
コルベイユ会員の発表の様子
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